東日本大震災から8年を迎えて~震災復興からの新たな一歩~


~震災復興からの新たな一歩~

 

東日本大震災から8年を迎え震災の犠牲になられました多くの御霊に哀悼の意を表すとともに、未だ震災の影響によりご不自由な生活を強いられている多くの皆様には心よりお見舞い申し上げます。

被災地にも8年の歳月が流れ、沿岸地域も震災の爪痕が表面上は癒えたような風景ではありますが、被災された皆様の心情を思うとき、上辺の景色とは違う情景が映っているものとご推察致します。

さて、岩手の港湾に目を転じますと、昨年3月末、釜石港湾口防波堤災害復旧工事の完了で東日本大震災での直轄港湾災害復旧事業が全て終了し、現在は復興事業として久慈港の湾口防波堤、宮古港の竜神崎防波堤の整備を進めています。県内の重要港湾4港では、震災前の港湾機能がほぼ回復しており、復興道路、復興支援道路の延伸とも相まって取扱い貨物量の増加が続いています。

ここで、仮定として物流インフラ施設について、震災前の状態に戻ることを「復旧・復興」、震災前以上に整備されたり利用されたりすることを「創生」と位置付けたとすると、まさに今が復旧・復興から創生への大きな第一歩を踏み出していると感じています。高規格自動車道の復興道路、復興支援道路が着々と整備され、しかも大半が無料区間であることから今後の利用拡大が大いに期待されています。この道路の大半が新たな物流インフラ施設であり、開通する都度に創生が進むこととなります。

一方、港湾での新たな展開として、大船渡港では沿岸地域での津波防護機能の整備が進められ、津波浸水域であった臨港地区に地元セメント企業のバイオマス発電所建設が今年完成を目指して進められています。釜石港では震災直後に開設したコンテナ航路によって取扱貨物量の増大とともに利用する企業も増え多種多様な貨物の流動が地域経済を牽引しています。宮古港では昨年6月に開設した北海道室蘭港とのフェリー航路が新たな人・物の流れを創り出し、また、平成30年北海道胆振東部地震の際は被災地の支援として貴重な緊急輸送のルートともなりました。久慈港では、野田村のバイオマス発電用燃料であるパームヤシ殻の輸入拠点となっているほか、地元産の硅石が建築用軽量外壁材等としての取扱いがかつて無いほど増加しています。

さらには、クルーズ船の岩手県内港湾への寄港回数も増加するなどクルーズ振興も活発化しており、宮古港ではこれまで県内へ寄港した中でも過去最大の12万トン級の大型客船が入港する見込みとなっています。

このように沿岸地域の創生の歩みがかたちとして現れており、釜石港湾事務所では職員一丸となって、この歩みを止めること無く地域の皆様と手を携えて取り組んで参ります。

結びに港湾の利活用の拡大から沿岸地域さらには岩手県全体が創生、発展することを心から祈念し、港湾整備や利用拡大の取り組みに精励致します。


                          平成31年3月8日 釜石港湾事務所長 下澤 治  180309simozawa1.JPG