東北港湾の技術開発ビジョン/1.東北地方の21世紀における港湾の構想
1.1東北の地域構造と港湾の課題・特徴

 内陸型・分散型の地域構造
 これまで、東北地方の都市形成や産業開発は、奥羽山脈等の山系によって東西に分断された地形や、社会、経済の中心地である首都圏に近接するという地理的条件から、南北方向に形成される幹線鉄道軸あるいは道路軸を中心に展開されてきました。
 その結果、人口や産業の集積が内陸型・分散型の地域構造であり、相対的に臨海部の人口・経済活動の集積が低い地域となっています。

 東北地方のグローバル化の遅れ
 全国的にグローバル化が進展している中で、東北地方では、企業活動において行う海外との取引の占める割合が全国や他地域に比して極めて低く、また、先に述べた地域構造や、地域経済の首都圏への依存性が、グローバル化の出遅れを招いています。今後はグローバル化の推進が大きな課題となっています。

 小さな港まちが多い東北地方
 東北における港のある都市、すなわち港まちは、古来より港とともに発展してきましたが、全国水準と比較して人口や産業などの集積度が低く、いわゆる小さな港まちが多いことが特徴です。青森市、秋田市等の一部を除くと、全国に比べて小さな港まちが多いことから、市民が主体となった港を活用した地域の活性化などが比較的容易であると考えられます。

 豊かな自然環境と豊富で上質な観光資源
 東北の沿岸域は、リアス式海岸、砂浜海岸、内湾といった多様な海岸線を有し、一方で、沿岸海域に黒潮や親潮、対馬暖流が流れることなどにより、変化に富んだ豊かな生物相が生息しており、水産資源も豊富です。また、日本三景に数えられる松島等の国際的に優れた観光地、景勝地も多く見られます。
 更に、港祭りのように生活に根ざした地域の文化、秋田港や酒田港など北前船時代からの歴史的資源など、観光資源として活用できる素材も豊富です。

 厳しい自然
 東北沿岸域は、外海に面しており、日本の中でも特に波浪が高い地域であり、また、以前より地震・津波等の自然災害による被害を数多く受けるなど、厳しい自然条件となっています。そのような中、宮城沖で20年以内に大規模な地震が発生する可能性が80%程度と非常に高いことが発表されており、今後の被害の発生が懸念されています。
 また、地形特性や自然条件の厳しさから、港湾開発においては、防波堤整備による、人工的な静穏海域の形成や災害防護が不可欠した。その結果、閉鎖性の強い海域も出現し、一部の海域では水質の悪化等も生じており、良好な海域環境を回復する必要性が高まっています。



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