経済・文化・各種技術の飛躍的な発展を見せた20世紀が終わりを迎え、21世紀がスタートしました。21世紀はこれまでの急速な発展の時代から、高レベルに発達した経済・文化をいかに持続させていくかが問われています。
東北地方は地形特性や自然条件の厳しさから、近接する首都圏と比較して、社会資本整備に遅れをとったこともあり、特に経済において首都圏に大きく水をあけられた状況にありますが、一方で豊かな自然を有しており、魅力ある地域として、更なる経済の発展を遂げていくためには、地域と国内外を結ぶ港湾が果たす役割が大きいことは言うまでもありません。
他方、情報技術(IT)分野では、IT革命により、首都圏をはじめとする他の地域にひけをとらないレベルにまで均衡化が図られつつありますが、その結果、企業間競争が激しさを増し、新規ベンチャー企業などの参入が容易となり、通信・交通システムに大きな革新をもたらしました。
物流にも大きな変化の波が押し寄せ、ジャストインタイム輸送や3PL(※)など、ロジスティクスの構造から変革を迫られる時代になっています。
このような状況の中、国土交通省東北地方整備局は、21世紀初頭における東北地方の港湾に関する今後の取り組みの指針として「東北港湾ビジョンみちのく港の将来像-参加と連携による実現を目指して-」を策定しましたが、東北地方の港湾整備に当たっては、日本の中でも波浪が高い地域であることや、以前から地震・津波などの自然災害を数多く受けていることなどの厳しい自然条件からの防護と、美しく豊かな沿岸域環境の回復を調和的に推進させることが不可欠であるとともに、老朽化した施設の維持・修繕・更新への対応など既存ストックを有効に活用しながら、より効率的・機能的な港湾を形成していく必要があります。
これらの実現には、技術支援が不可欠であり、新しい可能性を開拓する技術の実用化へ向けた技術開発を重点的かつ効果的に推進していくことが極めて重要です。
これまでも、従来から時代の背景に対応した技術開発を推進してきたところですが、新たな時代に対応するため、国土交通省港湾局は平成13年5月に「新世紀を拓く港湾の技術ビジョン」を策定し、港湾の技術開発推進方策を示しました。
本ビジョンは、「東北港湾ビジョン」が示す東北港湾の”将来像の実現”と、各地域のみなとが抱える”現在の問題改善”へ向けて、「新世紀を拓く港湾の技術ビジョン」を踏まえながら、東北地方の港湾がこれからも豊かな自然環境を活かしつつ、更なる発展へ貢献していくために必要な技術開発の方向性と推進方策をここに策定し、東北の港湾における今後の技術開発計画を示すものであります。
また、ここに示す技術開発計画は、技術の進歩や東北の港湾をとりまく情勢の変化等を踏まえ、柔軟に見直していくことが必要と考えています。
平成15年3月
国土交通省 東北地方整備局 港湾空港部
※ 3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)。荷主(当事者)でも物流業者(第2者)でもない第3者が、荷主にとって最も経済的かつ有効な方法の物流体制をコーディネートすること。
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