東北港湾の技術開発ビジョン/1.東北地方の21世紀における港湾の構想
1.2東北港湾ビジョンが示す「みちのく港の将来像」

 東北地方整備局では、前述した東北の地域構造と港湾の課題・特徴を踏まえ、21世紀初頭における東北地方の港湾に関する今後の取り組みの指針となる「東北港湾ビジョン」を策定しており、今後は、このビジョンに示された「みちのく港の将来像」の実現へ向けて邁進していきます。
 以下にその概要を示します。

(「東北港湾ビジョン」の概要)
 東北地方が、その最大の財産である自然を守りながら、自立的な発展を図り、強く美しい東北を目指す上で、社会基盤としての港湾が果たす役割は大きい。
 グローバル化の急速な進展の中で、東北の産業がとりわけアジアとの関係を強め、かつ国際競争力を高めていくためには、海外との間で物資輸送を低コストで効率的に行っていく必要がある。また、地域の人々が主体的に自らの地域に誇りをもって暮らすための地域づくりに資する空間づくりを進めるとともに、最大の財産ともいえる自然環境の保全を図りつつ、津波や高波等の自然災害から人々を守り、安心して暮らせるための地域づくりを進める必要がある。
 こうした役割を果たすために、次の3つの目標とその実現のための具体的戦略、取り組み姿勢が示されている。


目標1.東北各港の連携による広域活用港湾の実現
内陸型・分散型の地域構造を考慮し、東北全域のグローバル化を進めるため、県境を越えて互いに複数の港湾利用を可能にするとともに、各地域が東北の港湾全体を共有して活用できる「広域活用港湾の実現」を目指す。
なお、実現については、国・港湾管理者などが各々の役割を責任をもって果たしつつ取り組んでいく。
戦略1 グローバルネットワークの構築
1)中国ダイレクト輸送拠点の形成
2)北米ダイレクト輸送に対する東北拠点港の形成
3)対東南アジア、対岸、対韓国及び対欧州との輸送
4)「広域コンテナマネジメントシステム(仮称)」の構築
戦略2 産業活動と一体化した海上輸送ネットワークの形成
1)資源輸入拠点機能の強化
2)内航ライナー拠点の形成
3)静脈物流拠点の形成

目標2.地域が主役となる市民連携港湾の実現
小さな港まちならではの利点を活かし、そこに住み働く人々の創意と工夫による港まちづくり活動を通じて、地域が主役となる「市民連携港湾の実現」を目指す。
なお、実現については、地域の主体的な取り組みに対し、国は最大限の支援をしていく。
戦略1 地域資源を活かした経済活性化への支援
1)地域の手による地場資源・地場産業を活かした多目的港湾利用
2)みちのく観光港の形成
戦略2 生活者の視点に立った港まちづくりへの支援
1)市民が身近に近づける親水空間の創出
2)海の文化を育む港づくり
3)手軽な海洋レジャースポット

目標3.東北の多様な自然と調和する環境・安全港湾の実現
東北の豊かな自然の魅力を活かし、美しく、人にやさしい環境と調和した港湾づくりを目指す。一方で、高波浪、地震、津波、大雪などの厳しい自然条件への備えも重要であり、こうした自然災害に対する安全・保全も含めた自然と調和する港湾の実現を目指す。
なお、「環境・安全港湾の実現」については、地域と国の両者が協力して取り組んでいく。
戦略1 まちづくりと一体となった地震・津波・高潮対策
1)緊急時における防災拠点の形成
2)津波・高潮災害からの防護体制の形成
3)生態系と調和した防災施設の整備
戦略2 港湾を活用した海域環境の保全・再生・創造
1)防波堤整備により生じた閉鎖性海域の環境再生
2)上流域・都市部と連携した海域環境の回復
3)地域と調和した港湾景観の形成と回復


 具体的戦略を実現し、3つの目標を達成するには、国、港湾管理者が各々の役割と責任を果たしながら、地域とも密に連携し、パートナーシップをとりながら取り組みを進めていく必要がある。
 また、港湾に対する社会的要請は多様で、かつ緊急を要するものも増えてきていることから、関係行政機関とも連携しながら、即行動に結びつく迅速な対応を進めていくこととして、以下に示すような具体的な取り組みが示されている。

3つの目標達成に向けた取り組み
1.組織体制の構築
  • 「広域コンテナマネジメントシステム(仮称)」構築に関する推進組織の設置
  • 動静脈物流ネットワーク構築に関する推進組織の設置
  • 地域・民間事業者・行政機関の連携による内航ライナー利用促進体制の構築
  • 市民連携港湾実現のための懇談会等の設置と港湾の環境維持
  • 地域における港づくりを支援する東北全体の連携体制の構築
  • アドプト制度(緑地等の施設の市民組織への管理運営委託制度)の導入の検討
  • 他の地方ブロックとの連携
2.情報の蓄積・提供
  • 東北の港湾の広域的な利活用促進のための定期航路や規制等に関する情報の提供
  • 港とまちの歴史に関する情報、環境情報の蓄積及び提供
  • 市民が親しみを持って参加できる行事の企画と情報提供
3.計画的な投資システムの推進
  • ビジョンに沿った各港の港湾計画の見直し等
  • 東北地方独自のリーディングプロジェクト制度の設立と指定
4.既往のシステム及びストックの活用と見直し
  • 港湾料金の見直し等によるサービスの向上
  • 長周期波の影響や荷役時間の長期化等に対応した静穏度確保の推進
  • 既存ストックの有効活用



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